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微量ミネラルの導入などにより、家畜の疾病や事故の発生を抑制し、健康に家畜を飼養し、良質な牛乳を生産することで、まだまだ利益を上げられる余地は十分にある

   前回は、作物の良質化に不可欠なリン酸とその有効化について見てきました。実行さえしてみれば、その有効性は確認できるはずです。
 今回は、前回予告したトレースミネラル(以下微量ミネラル)について考察したいと思います。

 先進国を中心に酪農をはじめとするすべての農業分野、言い換えれば食品生産現場における抗生物質や化学合成農薬などの薬物使用を大幅に減らす方向への取り組みが、積極的に進められています。その一つの例が有機栽培や有機畜産などのオーガニックの取り組みです。
 そのためには作物や家畜の病気を減らす予防的対策が求められています。その有効な対策の一つとして微量ミネラルの使用があります。これは10年以上前から海外先進国では「REMINERALIZATION=再ミネラル運動」として行われてきた動きです。
 現在、酪農の生産現場においては生産調整における不安や混乱が起きています。しかし有機農業まで至らなくとも、微量ミネラルの導入などにより、家畜の疾病や事故の発生を抑制し、健康に家畜を飼養し、良質な牛乳を生産することで総体の売り上げは抑えられても実質(手取り)の利益を上げられる余地は十分にあると思います。
 晴耕雨読ではありませんがこの数年を自分の農場における改善のチャンス、すなわち規模拡大で今まで十分に取り組んでこられなかったことを洗い出し、それにチャレンジしてみてはどうでしょう。チャンスは十分にあると思います。

 今回のテーマである微量ミネラルについてこの原稿を執筆するにあたり、「畜産の研究 第60巻第3号」に微量ミネラルの役割に関する海外の文献の翻訳記事を見つけましたので、ここに紹介したいと思います。豚の生産性についてのことが中心ではありますが、微量ミネラルの働きについては作物、家畜そして人間すべてにほとんど共通します。難しい表現が使われている箇所がありますが、少しガマンして読んでいただければと思います。(後述でわかりやすく解説します)。
「畜産の研究」より
―家畜の飼養と微量ミネラル―
微量ミネラル(trace minerals)の家畜飼養上における役割については、生産者、配合飼料業者、獣医師、栄養学者たちが常に関心を寄せている大きなテーマである。家畜における微量ミネラルの適正な摂取と吸収は、細菌ウイルスなどの病原体の感染に対する免疫力の強化、および繁殖能力と発育成長の効率化にとって必須の要件である。
 現代の集約畜産では家畜に対する微量ミネラルの適正な補給与が急速にその必要性を強めてきた。その理由は、現代畜産の集約的生産システムが効率的に生産を上げるには、家畜に対する微量ミネラルの適正な投与が不可欠だからである。
 家畜における微量ミネラルの状態が不足し始めると、初めのうちは欠乏症状がほとんど不顕性であるが、この不顕性の欠乏状態が継続すると、まもなく深刻なミネラル欠乏症となって家畜の生産性を低下させ、健康上のトラブルを発生させる原因になる(表1参照)。
―中略―
表1  豚群生体内における微量ミネラルの状態が豚群の健康と生産性に及ぼす臨床的変化
(ミネラル状態) (欠乏症状) (家畜生体の臨床的状態)
欠乏開始前後 不顕性 健全な免疫力と酵素作用を維持
欠乏開始前後 不顕性 高い成長速度と繁殖成績を維持
欠乏状態の継続 不顕性 普通の成長速度と繁殖成績を維持
欠乏状態の進行と拡大 欠乏症状の発現 成長速度と繁殖成績の全体的な低下
免疫力の急速な低下と罹病率の増加

―有機性と無機性のミネラル添加物―
  養豚飼料に添加される飼料用微量ミネラルには単純な無機的形状(inorganic form)と複合有機的形状(organic or complexed form) の製品とがある。有機的形状の微量ミネラルはそのタイプによって化学的および構造的に違いがある。
 飼料添加用の微量ミネラルには製品によって生物的利用性(bioavailability)に優劣の差がある。複合有機性の微量ミネラルは無機性の微量ミネラルにくらべて家畜における生物的利用性が大であり、したがって有機性微量ミネラルを配合した給与飼料は、無機性微量ミネラルを配合した給与飼料よりも栄養的有効性が高く、家畜の発育成長と繁殖成績の改善に貢献することが証明されている。―中略―

―微量ミネラルの代謝機能―
  養豚生産における微量ミネラルの役割をより正しく理解するには、微量ミネラルが豚の生体内の多様な代謝システムとその代謝の機能的要素をつかさどる物質であることを知る必要がある。
 微量ミネラルの機能は次の四つのカテゴリーに分けられる。機質的(structural)、生理学的(physiological)、触媒的(catalytic)、調節機能(regulatory)である。
 機質的機能とは、生体の組織や器官と臓器を形成する構造要素としての微量ミネラルである。一例をあげると亜鉛(Zn)は分子や膜組織の健全化とその安定に貢献している。
 生理学的機能とは、体液や組織内の微量ミネラルが、浸透圧、酸-塩基平衡、および膜浸透性を維持するときの電解質的に作用する機能である。
 触媒的機能とは、酵素やホルモンなどの内分泌システムにおける金属酵素の触媒的役割にかかわる働きで、恐らく微量ミネラルの機能のうちでは最も大きな活動分野であろう。微量ミネラルは金属酵素を構成する要素としての役目を働き、そして金属酵素的活動が終わると消去する。この金属酵素の多様な働きは動物の栄養代謝では広範囲な分野にわたって要求されている。たとえば、エネルギー生産、タンパク質消化、細胞増殖、抗酸化作用、および損傷癒着などである。
 調節機能としては、亜鉛が遺伝情報(DNA)の転写に関与していること、またヨウ素がチロキシン成分の一つとして甲状腺機能に関与するホルモンと、およびエネルギー代謝などに影響を与える役割を果たしていることが証明されている。

―家畜の免疫力と微量ミネラル―
  微量ミネラルが家畜の健康維持にとって重要な栄養素であることは、過去何世紀ものあいだ広く知られてきた。また研究的にも微量ミネラル栄養素が動物の免疫機能に根強い効力をもっていることが証明されている。―中略―アメリカの配合飼料会社の栄養専門家たちはNRCの編集者たちから、飼料配合のレシピを決定するときの微量栄養素の配合量については、その“安全性の限界”を考慮に入れた上で、なるべくNRC標準の高いレベルを採用すべきだとの注意を受けている。―中略―
以上、「畜産の研究」からの抜粋

以上の記事を要約すると、以下の3点になると思います。

1. 微量ミネラルは、広範な代謝機能に深く関わっている。ここでは4つのカテゴリーに分けて説明しているが、特に重要なのは酵素やホルモンなどの内分泌系における触媒的役割である。
2. 微量ミネラルは家畜の健康維持にとって必要な免疫機能に根強い効力がある。
3. 飼料用微量ミネラルには有機性と無機性のものがあるが、有機性のものが生物的利用性が大である。配合量は“安全性の限界”を考慮した上で、NRC標準の高いレベルを採用すべきである。

以上の3つの項目について解説します。

【1の解説】…恒常性の維持
 生物は体の中で、というよりも小さな細胞の一つ一つの中で何百種類という化学反応が同時に間違いなく起きています。例えば呼吸や消化などがその生命体の意志に関係なく常に正常に行われています。それは特別な触媒、すなわち酵素のおかげであることがわかってきました。
 私たちが生きていくうえでの生命体としての働きには、正常値と異常値があります。正常値には幅があり、その幅の中で人間の機能は意志とは関係なく、自動的にコントロールされています。
 例えば体温や体液のpH、そして繁殖活動などは常に正常値の幅の中に収まるようコントロールされているのです。その恒常性をコントロールしているのが酵素とホルモンです。そして、その活性基になるものが微量ミネラルなのです。これは正常な環境下で、バランスのとれた栄養を適切に摂取し、適切な代謝が行われ、適切に排泄されている場合です。これらの条件が長期にわたって満たされなくなると、すなわち微量ミネラルの不足あるいはアンバランスにより異常値の中に一定期間置かれると酵素活性に異常をきたし、病気にかかりやすくなったり、死に至ることもあります。さらに精神の働きにも影響を与えるようです。
 米国やドイツ、イギリス、日本の医学者によると、凶悪犯や変質者が入っている少年院や刑務所の囚人の毛髪によるミネラル分析調査を行ったところ、ほとんどの人たちに微量ミネラルのアンバランスが見られ、有害金属の蓄積が多かったと発表しています。すなわち劣悪な環境でつくられた微量ミネラルバランスの悪い食品を食べていると、犯罪も増えるということになるようです。
【2の解説】…生体防御システム
 すべての生命体はその生命維持のために、生体防御システムを持っています。すなわち侵入してくる病原菌に免疫抗体を分泌して戦います。
 その例を人間の場合で見てみましょう。
病原菌は通常、口、鼻、目あるいは傷口から侵入し感染します。たとえばインフルエンザも鼻やのどから冒していきます。ここには強い殺菌力をもつ溶菌酵素リゾチウムを含む粘液物質が分泌されています。いわゆる唾液・ツバです。動物もケガをすると、その傷口をよくなめています。
唾液で撃退できなかった菌は、胃に到達します。胃に侵入した菌は、pH1~pH2の胃酸(塩酸)が殺菌します。これくらいのpHですと、コレラ菌でも死ぬそうです。
胃で殺されなかった菌は十二指腸で、アルカリの胆汁液で殺菌します。
ここでも殺されなかった菌はリンパ腺に到達して、リンパ球と戦います。この戦いの結果、熱が出ます。
この戦いで殺されなかった菌は、さらに細胞膜に到達します。そこではマクロファージという免疫抗体が待ち受け、食菌を開始します。その一方でその病原菌がどのようなウイルスなのか、あるいは何型ウイルスなのか、あるいはガン細胞なのかという認知をはじめます。
認知ができると、心臓の下の胸腺(thymus)に報告し、ティムスのTをとったT型キラー細胞という免疫抗体物質を分泌します。
それは先に報告のあったウイルスのタイプあるいはガン細胞を認識して、破壊食菌できるT型キラー細胞となります。また血液中では、インターフェロンという免疫抗体ができます。それにはα、β、γ、μというのがあり、病原菌を食菌します。さらに脊髄の下部からはナチュラルT型キラー細胞が分泌され、病原菌を破壊食菌します。
以上見てきたように完璧な生体防御システムが、私たちの体や命を守っているのです。このシステムの能力は若い時ほど高いそうですが、免疫抗体の分泌力は東京大学の実験の結果、栄養状態でその分泌力は100倍から1,000倍も違うそうです。さらに、微量ミネラルがその免疫機能に効力をもっていることが証明されているのです。
【3の解説】…ミネラルの形態
吸収性に優れた微量ミネラルのタイプとしては「キレートミネラル」、「コロイドミネラル」の2種類があり、その他吸収の悪いものに「無機金属ミネラル」があります。これらについて詳しく見てみましょう。

 自然界では、原子量の大きいミネラルは酸素と強く結合し、難溶性ミネラル化合物になり、「コロイドミネラル」または「無機金属ミネラル」の形態となります。
 「キレート」とは化学用語で、ギリシャ語の「蟹のはさみ」から由来した言葉で、有機物などが金属イオンを挟むように結合してできた化合物のことを言います。あらゆる生命体の中ではエネルギーの供給、解毒など生命体を維持する働きを持つ酵素活性の中心には、「キレート」という形でミネラルがアミノ酸に取り囲まれ、重要な役割を果たしています。植物の光合成に関わる色素「クロロフィル」と血液中で酸素を運ぶ色素「ヘモグロビン」をその例として見てみましょう。

 「クロロフィル」と「ヘモグロビン」は、有機物に包み込まれ、Mg「マグネシウム」とFe「鉄」がそれぞれの中央にあり、「キレート」を形成しています。「キレートミネラル」は生命体に吸収されにくい難溶性ミネラル化合物の金属を挟み込んで、可溶化、有機化し、生体の吸収、利用を助けます。「一般に養分は、水に溶けたイオン状態で吸収されると言われている。確かに窒素やカリなどはイオン吸収が中心だが、鉄や銅、亜鉛など原子量が大きい金属ではキレート体による吸収が主力になっていると考えてよい」。また、もともと生体内にあるものなので、生体への負担も少ないという特徴があります。
 「コロイド」とはイオンより大きく細菌より小さい粒子(直径10-6~10-9m 程度)が、他の物質に分散している状態のことを言います。身近な例として、牛乳は乳成分が分散しているコロイド状態の液体です。その成分は大変細かいのでろ紙をも通過することができるのです。この牛乳の成分のように、「コロイドミネラル」は難溶性ミネラル化合物ですが、これに含まれるミネラルは細かい超微粒子なので、水や土壌の中で自由に拡散でき、細胞の隅々まで浸透し、吸収率もキレートに次いで高くなります。
 この二つの形態では過剰摂取の心配はなく、多めに摂った場合はすべて体外に排出されます。
 通常の「無機金属ミネラル」は土壌や水の中で拡散ができず、生命体は分解も吸収もむずかしく、このままではたとえ吸収できても、細胞にダメージを与え、しかも摂取する量が多くなると有毒となります。

 以上のように微量ミネラルは、生命体の健全な活動のコントロールボックスとしての酵素の活性基として、さらに健康維持のための生体防御システムとしての免疫抗体の活性基として重要な成分なのです。これは動植物すべての生命体に共通しており、さらに有用菌にとっても重要な成分であるとの報告もあります。例としては、酒どころとして有名な伏見、灘の水は有用微生物を活性化する微量ミネラルを多く含んでおり、これが良質なお酒をつくることができる最も大きな要因であると言われています。
 しかし、近年とくに微量ミネラルが作物や家畜などの生命に大きな関わりを持っていることがわかってきたにもかかわらず、十分に見直されないのはどうしてなのでしょう。
 その結果として、現在起きていることを端的に表現している方がいらっしゃいます。
 『昭和三十六年農業基本法が制定され、農業の専業化が始まると、窒素肥料重視の三要素化学肥料重点の施肥体系によって、土壌中の“いのち”を支えるミネラルバランスは急速に崩れ始めて、今日の不健康な生育を増長し、病虫害の多発を招き、農薬の異常なまでの多用が平常化する事態となっているのです。そして我々は栄養もアンバランスで生命力の弱い、このような作物を直接または加工原料として使用した食品を常食せざるを得ない状態におかれているのです。
 今日の文明は量的増大が第一目的でありますから、人間も身長と体重は増加したけれども、体質は低下しているのであろうと思われるのです。悪質な伝染病と細菌性の疾患は、医薬の急速な進歩によってほぼ封殺することができましたが、退行性の成人病、慢性病は増加する一方です。この現象はついには成人から小児へ、小児から幼児へと移行し始めており、また出世児の奇形の発生率も段々増加の一途をたどっています』

 次に、人間をモデルに生命体を構成する必須元素について見てみましょう。
1 人間の体を構成する主要元素はC(炭素)、H(水素)、O(酸素)、N(チッ素)の4元素で、全体の96.6%となります。これらは空気と水から由来し、燃焼すると空気と水に帰ります。
2 準主要元素としては、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、K(カリウム)、Na(ナトリウム)、S(イオウ)P(リン)、Cl(塩素)の7元素で3~4%を占めています。これらは土と海由来のもので、燃焼すると土に帰ります。
3 微量ミネラルとしては、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Mo(モリブデン)、Se(セレン)、Co(コバルト)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、I(ヨウ素)、F(フッ素)、V(ベナジウム)、Sn(スズ)、Si(ケイ素)の14元素で、わずか0.02%を占めています。これらも土と海由来のもので、燃焼すると土に帰ります。

 このようにわずか4%が土あるいは海由来の準主要元素からできており、さらに今回のテーマの微量ミネラルはわずか0.02%です。この0.02%の微量ミネラルが私たちの体内で大変重要な働きをしていることが、年々明らかになってきているのです。しかし多すぎると毒性を示したり、また微量ミネラル同士のバランスも重要なので、その利用の仕方が難しいという問題があります。以上見てきた必須元素についての傾向は作物も家畜も同様です。
 さて、重要な働きをする元素(成分)ではありますが、わずかな量でさらに元素同士のバランスをとりながら、作物や家畜に与えるにはどうしたら良いのでしょう。
 次にその方策について提案します。
提案 1  有機化された良質な土壌改良ミネラル資材を堆肥とともに積極的に利用する。
 良質な堆肥づくりをして(2、3月号参照)、積極的に利用し、化学肥料を減肥、成分を調整する。堆肥には十分ではないが、微量ミネラルがある。
 さらに堆肥づくりの段階で、グアノのような良質な有機質リン酸カルシウム資材を投入する(4月号参照)。あるいはリン酸が土壌に十分ある場合は(植物にとって吸収されにくいリン酸であっても)、良質な貝化石を同じように堆肥づくりの段階で投入し、発酵させる。あるいは、それらを堆肥とともに土壌に施用する。グアノも貝化石も、生き物全体が含まれている資材は微量ミネラルを豊富に含んでいる。さらに良質なグアノや貝化石は長い年月をかけて有機化されているため、先にお話しした「コロイドミネラル」あるいは「キレートミネラル」として、作物を通して家畜に効率的に利用される。土壌分析、飼料分析、とくに血液検査でミネラル成分のチェックを経時的に実施する。
 きっと今までにない満足できる結果が確認できるはずです。
提案 2  キレート化された良質な微量ミネラル資材を直接家畜に与える。
 提案1の堆肥づくりから実施する時間的余裕がなく、すでに免疫力低下が原因と思われる疾病や事故が多発し、すぐにでも何らかの処置が必要な場合は、市販の総合的な微量ミネラル資材を利用する。ただし効果発現まで2~3週間はかかるので、その間は通常の治療も併用し、その後微量ミネラルの利用を主に継続する。すなわち体質改善は一般的には対処療法とは違い、少し時間がかかるということです。  当社では総合微量ミネラル資材(AZM※1)の普及を通して、家畜・作物の健全化、良質化のお手伝いをさせていただいております。
 以下にその例を取り上げます。
 使用例
養鶏の生産者組織に取り上げられ、その推薦で利用している千葉県のS養鶏場を訪問した際にお話しいただいた内容です。
  Sさん 「ヒナを導入する際、8種の混合ワクチンを接種するのだが、一般的にはその後、数日はヒナはぐったりと弱ってしまう。しかし接種前にAZMを給与することになってからはこのようなことはなくなり、ヒナは弱ることなく元気に育っている。さらにAZMを成鶏にも導入しているが卵の質が変わり、卵殻も強くなり破卵も減った。」
そこで私はSさんから良い卵の見方を教わりました。
北海道留萌管内T町E牧場でのお話です。
 

Eさん 「今まで一頭あたりの乳量を高く搾ってきた。飼養管理には気を使ってきたので、あまり疾病や事故はなかったのだが、最近は今までになかったような事故が起きて困っている」
Eさんはスラリーストアを導入し、2月号で紹介したR/Mと4月号に紹介したS/Gでの良質なスラリーづくりに取り組み始めたばかりでした。よってまだこれらを活用した良質スラリーを散布してつくった牧草は収穫しておらず、私はAZMの使用をお勧めしました。
 その数ヵ月後T町に依頼を受け実施した「土づくり」の勉強会にEさんも参加されており、最後の質問を受けた際に次のように言っていました。
Eさん 「あのAZMを給与してから何となく牛の調子が良いのだが、何が効いているのだろうか」
 私はEさんの牛群に足りなかったものは主要な栄養要素ではなく、微量ミネラルだったのだろうとお話しました。

北海道十勝管内N町M牧場でのお話です。
  Mさんの息子さん 「牛の他に、趣味のシクラメンにAZMを与えたところ、今まで全然咲かなかったものが次から次へと花をつけた。またイチゴに与えたところ、真ん中まで真っ赤で大きな立派なイチゴができ、本当に驚いた。」
当社温室内での梅の木の回復
   当社には温室があり、その管理を元林業試験場におられたAさんにお願いしています。その温室には梅の木が2本あり、枯れかかっていたので何とかならないかとAさんに相談したところ、残念ながらもう回復は望めないとのことでした。
 私は何とかしたいという一心でAZMを根元に撒き、十分に水を与えたところ、この梅の木はみごとによみがえったのです。Aさんの「いったい何をやったのですか。」との問いに、私は「AZMと水をあたえただけ」と答えました。再度微量ミネラルの重要性を実感しました。
 花さかじいさんが灰をまいて見事な花を咲かせた話は、実はすごく化学的な話なのです。
 その他日本一大きなTMRセンターや各地の優秀な牧場で利用されています。
※1 AZMは当社取扱い総合微量ミネラル資材の製品名の略です。100%天然無添加のキレート化されたミネラル資材で、通常のベントナイト製品に比べ2倍のカビ毒吸着効果もあり、さらに有機農業にも使用可能な資材です。米国では億の羽数の鶏に給与され、また書籍「土壌の神秘」にも紹介され世界各国で利用されています。

 繰り返しにはなりますが、現在、先進国を中心に抗生物質や化学合成農薬の使用をできるだけ減らす飼養管理・栽培技術、すなわち病気に強い生命力のある農畜産物の生産が求められており、そこに微量ミネラルの使用は重要な働きをしています。主要な栄養は十分満たされる飽食時代にあって、今一度微量ミネラルに注目し、その重要性を考えてみる必要があると思います。

 次回は土づくりのまとめとサイレージづくりを中心に見ていきます。
 
《参考資料》
「豚の生産性における微量ミネラルの役割」
T.M.Fakler ・ C.J.Rapp ・ T.K.Cheng著、鈴木章訳
畜産の研究、第60巻・第3号、養賢堂
「高カルシウム作物をつくるピロール農法」酒井弥著、
1996年、農文協
「土といのち―微量ミネラルと人間の健康」中島常允著、
1987年、地湧社


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