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C/N比が20以下 |
スラリーが良質なものになっていくと、まずニオイが減ります。そして下層のオリ、中層の水様物質、上層のスカムに分離していたものが、全体的に均一なものになります。そして粘性が下がります。 |
資料名 | C/N比 | 窒素含有率 (乾物中、%) |
窒素無機化率*1 (%) |
窒素の放出量・ 取り込み量*2 (kg/乾物100kg) |
魚かす | 4.7 | 9.08 | 88 | 8.6 |
ダイズかす | 4.7 | 6.95 | 80 | 5.6 |
米ぬか | 15.0 | 2.40 | 83 | 2.0 |
余剰汚泥 (食品工場) |
6.3 | 6.97 | 75 | 5.2 |
鶏ふん | 6.0 | 4.09 | 75 | 3.1 |
豚ふん | 9.8 | 4.24 | 60 | 2.5 |
牛ふん | 15.5 | 1.99 | 33 | 0.7 |
クローバ | 12.2 | 3.55 | 63 | 2.2 |
稲わら | 60.3 | 0.65 | -2.4 | -0.02 |
麦わら | 126.0 | 0.33 | -116 | -0.4 |
製紙かす | 140.0 | 0.29 | -88 | -0.3 |
おがくず | 242.0 | 0.21 | -87 | -0.2 |
稲わら完熟堆肥 | 12.5 | 2.49 | 24 | 0.6 |
稲わら中熟堆肥 | 15.8 | 2.10 | 9 | 0.2 |
稲わら未熟堆肥 | 24.6 | 1.60 | 6 | 0.1 |
おがくず豚ぷん堆肥 | 22.0 | 1.92 | 27 | 0.5 |
おがくず牛ふん堆肥 | 17.1 | 2.31 | 20 | 0.5 |
バーク堆肥-1 | 19.3 | 1.95 | 13 | 0.3 |
バーク堆肥-2 | 35.3 | 1.05 | -2.3 | -0.02 |
*1: | 有機物が分解して窒素が無機態に変化する割合 |
*2: | この値が正の値なら、有機物に由来する窒素の放出(無機化)量、この値が負の値なら土壌から取り込む(有機化)窒素量(各有機物乾物100kg当たりの窒素量、kg) |
C/N比が20~30 |
適量な敷料を含むC/N比20~30の新鮮有機物は、一般的に、土壌改良効果と肥料的効果を持つ良質堆肥づくりのために最適な堆肥原料です。言い換えれば、堆肥原料のC/N比を20~30に調整することが、良質堆肥づくりのスタートになります。とくに好気性発酵による堆肥づくりにとって、空気の入りやすい状況と水分調整の機会も与えてくれます。 理想的な堆肥原料における好気性発酵堆肥と嫌気性発酵堆肥の比較事例を紹介します。 7年程前の冬に、群馬県のM市で酪農家向けの堆肥づくりの勉強会を実施しました。嫌気性発酵主体による生堆肥の土中発酵についてお話したところ、参加した皆さんが大変興味を持たれ、その中心的人物Kさんの牧場の畑を使って、その春に比較試験をしてみようということになりました。そのKさんは堆肥づくりに一生懸命な、また上手な方です。Kさんの堆肥を使って2反の畑をつくり、私がつくった堆肥を使ってその東隣に2反の畑をつくりました。その2反ずつの畑は地続きの1枚の畑で、その中心南側に電信柱が立っているので、それを境界の目印として東西に分けて同じ日につくりました。 私のつくった堆肥は生堆肥にR/MとS/Gを混合してつくったもので、つくったその日のうちにKさんの堆肥と同時に畑に入れました。そして両方に同じ品種のトウモロコシを播きました。秋になり、前回の勉強会に出席いただいた酪農家の皆さんにもK牧場に集まってもらいました。そして収穫直前のこの2種類の堆肥を入れた畑のトウモロコシを、全員で畑に入っていろいろ比較検討しました。 その差は一目瞭然で、皆さん大変驚いていました。私のつくった堆肥のトウモロコシのほうが質・量ともに出来が良かったのです。 その後半月ほどして、私のところへ群馬からその収穫後に起こしたトウモロコシ畑の写真が送られてきました。土の状態が電信柱を境にはっきり違うのです。私のつくった堆肥の入った圃場のほうがより濃いこげ茶色で、土も軟らかくなっていることが写真からもわかるものでした。その差を私に知らせようと送ってきてくれた写真だったのです。 その後、勉強会・検討会に参加してくださった方々を中心に、R/MとS/Gを使った堆肥づくりをされる方が出てきました。そしてその翌年、私が当地を訪問したとき、M市の山沿い周辺でダニが異常発生しました。それはイタリアンを喰い荒らすという虫害で、指導機関に問い合わせたがどうしたら良いかわからないとのことで、皆さんとても困っていました。しかしR/MとS/Gでつくった堆肥を入れた畑には、まったくそのダニが発生しないのです。このことにも皆さん大変驚いていました。そしてその年のラップサイレージを再度訪問の際に見せていただきましたが、色は明るくてつやがあり、果実臭のするとてもすばらしいラップサイレージでした。ご本人も大変喜んでいたことがとても印象的でした。 そのときからのご縁で、その後Kさんの圃場を毎年1反ほど、リサーチのために無償で使わせてもらっています。 |
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参考資料2 堆きゅう肥の品質特性 | |||
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オガクズ、バークなど木質系炭素の比率が高い敷料を多量に使った堆肥原料の場合、全体のC/N比も高くなります。分解は遅く、堆肥化の期間も長くなります。この場合の堆肥づくりのポイントは、少し切り返しを多めにするか、あるいは硫安など(N)を添加してC/N比を下げ、微生物の増殖を図り、分解をより強力に進める方法もあります。 うまくC/N比を下げられれば、土壌改良効果の高い堆肥となります。その場合、肥料的効果は低くなる傾向があります。一方C/N比の高い堆肥原料が十分に発酵せず、C/N比の高いまま堆肥として畑に持ち込まれると、肥料等で供給された土中に遊離する無機態窒素[N]を微生物が細胞内に活発に取り込み、有機化します。そのため作物が利用すべき窒素[N]が不足し、作物の生育が著しく制限されることがあります。これを「窒素飢餓」と言います。 バークやチップなど木質系の敷料を使った発酵牛糞堆肥、とくにルーズバーンなどでよく踏み込まれた堆肥は、水はけの悪い土壌、とくに重粘土の土壌の物理性を改良するのに大変有効です。団粒を形成し土を軟らかくし、水はけ・水もちと空気の流入を改善し、根の張りを良くします。この事例を紹介します。 8年ほど前に北見地区のS農協からの依頼で、農協営農部職員の技術研修を目的に、2年間の予定で当地のG牧場において堆肥による土壌改良を通して、良質なサイレージをつくるための技術研修をお手伝いさせていただく機会がありました。 そのG牧場でまず行ったことは、町内肉牛牧場のバーク踏み込み堆肥をさらに良質発酵させ、それにG牧場の堆肥を混合し、そこにリン酸質肥料を加えての堆肥づくりでした。その堆肥が入ったトウモロコシ圃場を生育期間中に何度か訪問し、見せていただきました。生育は大変良好で、そのトウモロコシサイレージの詰め込みにはS農協の職員の方々と、われわれファームテックジャパンのスタッフ、そして栃木のN酪農協(現在は3農協が合併してT酪農協)職員のSさんも研修のため立会しました。さらにスタッフのための理想的なサイレージマネージメントを見ていただくために私もトラクターに乗り、踏み込みを手伝いました。 その夜のホテルでのこと。栃木からわざわざサイレージの詰め込みを勉強(手伝い)したいとのことで参加していたN酪農協職員のSさんが夕食後、私の部屋を訪ねてきました。ノートとペンを持ち、「少し聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」とのこと。その日G牧場でやったことなど、サイレージについていろいろ質問をするのです。終わってみたら酒も飲まず、朝の3時になっていました。この勉強熱心なSさんのいる、そしてSさんにこの研修の機会を与えてくれたN酪農協は、将来立派な良い組織になっていくと確信しました。 |
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話は戻りますが、G牧場で詰め込んだトウモロコシサイレージを、「40日以降に開封しましょう。そのときまた来ます」とGさんと約束していたのですが、Gさんは「それまで待てない。少し開けてみていいか?」と電話をかけてきたくらい楽しみにしていました(実際はGさんの熱意に押され、開封したところには十分プロピオン酸をかけて再び完全に密封することを条件に、少しだけビニールを切って開けることを了解しました)。 開封後、私もそのサイレージを見に行きました。土の上につくったサイレージですが、サイレージに土がつかず、土にサイレージがつかない、見事なサイレージができていました(正確にはスタックをつくる場所を事前に打ち合わせをし、水はけが良くなるようバラスを敷き、その上に川砂を敷いたので厳密には砂)。その後も、そのサイレージ給与後のGさんの牛のコンディションを見るために、たびたび訪問させていただきました。 また1年目にトウモロコシをつくった牛舎横の圃場に、2年目にはビートの作付けをしました。このビートの生育もまた見事なもので、当のGさんもびっくりしていました。それとGさんは当時、こんなことも言っていました。 Gさん「いい堆肥をつくるようになってから、乗用車で通りかかる人がトランクから肥料袋を出し、ウチの堆肥をコソッと持っていくようになった。それもいくつかある中で、一番良いものを持っていくんだ。素人でも良い堆肥はわかるんだね」 G牧場は交通量の多い幹線道路沿いにあり、そこの一番目立つ小高いところに堆肥を置いていたので、濃いこげ茶色のつやのある素晴らしい堆肥は、誰の目にも良いものだとわかるのだろうと思いました。 S農協さんからの依頼による予定の2年が過ぎ、技術研修のお手伝いの最終日、S農協の営農部長Kさんが“ご苦労さん”の席を設けてくれました。その席で私に1枚のコピーを渡しながらこう言ってくれました。 K部長「東出さんたちには大変頑張っていただきありがとうございました。ただ私も一つだけ頑張りました。それは今まで町内の肉牛牧場の堆肥は畑作農家に運ぶ際にだけ補助が出ていましたが、今回のことで、酪農家に運ぶ際にも補助が出るようにさせました」 その渡されたコピーには黄色のマーカーがしてあって、そこには確かにK部長が言ったことが書かれていました。 その後Gさんは、北見管内で堆肥づくりのための講師を頼まれたり、さらに4年ほど前には札幌市内のホテルで開催された畜産環境保全の講習会で、全道から集まった200人ほどの関係機関の技術者の前で発表者として参加されていました。私は忙しくてその発表を聞きに行くことができませんでしたが、うちの若いスタッフに聞きに行かせテープに録ってきてもらい、Gさんの話を大変幸せな気持ちで聞かせていただきました。 現在ではそのバーク堆肥の効果が評判となり、すべて畑作農家さんにまわってしまうため、G牧場では昨年から入手ができなくなったそうです。しかし自分のしてきた努力が土づくりを見直すきっかけとなり、畑作農家さんが良いビートなどの作物が採れるようになってうれしいとGさんは話しています。現在Gさんは、牧場外周のクマザサを刈ってきてそれを刻み、オガクズと一緒に牛糞に混ぜるという新たな堆肥づくりに挑戦しています。 ガンバレ、G牧場! 次回は、良質作物栽培に重要な働きをするリン酸とミネラルについて見ていきます。 |