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堆肥づくりは一生懸命しているつもりだが、なかなか自給飼料が良くならない。
堆肥を喜んで買ってくれない。何をどうしたら良いのだろう…?


 前回は、堆肥について、「生堆肥(未熟堆肥)」「好気性発酵堆肥」「嫌気性発酵堆肥」の三つに分けて見てきました。
 今回は、堆肥発酵の決め手となるC/N比(炭素率)について、前回お話した嫌気性発酵堆肥の現場での事例を組み合わせながら考察してみたいと思います(予定していたミネラルについては誌面の関係で今回は延期します)。

 まずC/N比(炭素率)について見てみましょう。ここでC/N比を取り上げるのは、堆肥づくりと土づくり、そして良質作物づくりに最も重要な要素の一つだからです。
 微生物の活発な活動(代謝)を人間は「発酵」と呼んでいます。狭義には「還元作用」、すなわち嫌気条件下での微生物の活動を「発酵」と言います。好気条件下で行われる活動は「酸化」と呼び、多くの場合人間の目に見えるものとしては「腐敗」という状態です。すなわち乳酸菌によりサイレージができることを「発酵」と呼び、サイレージが空気の侵入により好気的に変敗することを正しくは「腐敗(酸化)」と言います。しかし一般的にサイレージが好気的に変敗することを「二次発酵」と呼んでいますが、この場合も正確には「発酵」ではありません。
 しかし堆肥や土壌中では、この酸化と還元の反応は繰り返し起こるので、ここではそれら両方を発酵ということにします。
 さらに事例に出てくるR/Mは当社取り扱いの嫌気性菌主体による堆肥用微生物資材製品名の略、同じくS/Gは土壌改良資材有機質リン酸カルシウム肥料(特殊肥料)製品名の略です。

 ※文中の堆肥という表現にはスラリー、尿を含んだものとします。
 ※読みながら必要なところで参考資料1、2をご参照ください。


[C/N比(炭素率)とは]
人間はごはん(主食)として、白米、パン、めん類など炭水化物を摂ります。この炭水化物は、主に体を動かすエネルギーとして利用されます。そしておかず(副食)として、肉、魚、大豆食品などのタンパク質を摂ります。このタンパク質は、新陳代謝による新しい細胞をつくることも含め、主に体をつくることに利用されます。微生物も同様に、炭素[C]をごはんとし、主に活動エネルギーとして利用し、窒素[N]をおかずとして、主に増殖に利用します。
  微生物は空気があってもなくても、それぞれの環境に適した微生物が生息・活動します。空気以上に微生物にとって重要な物質は水と有機物であり、そこからごはんの炭素[C]とおかずの窒素[N]を摂ります。
  この炭素[C]と窒素[N]の割合を[C/N比]、あるいは「炭素率」と呼びます。堆肥原料である新鮮有機物のC/N比は、その後の堆肥発酵に影響を与えます。また、出来上がった堆肥のC/N比は、土壌環境と作物の生育に影響を与えます。
  堆肥発酵の過程でごはん[C]は微生物の活動のエネルギーとして分解・消費されるため、[C]は減少します。一方、おかず[N]は微生物の細胞内に取り込まれます(有機化)。そして死滅後、分解します(無機化)。その無機化された[N]は再び次の世代の微生物細胞内に取り込まれ、有機化されます。すなわち、おかず[N]は有機化、無機化を繰り返し、微生物の菌体タンパク質としていくつもの世代にわたって連続的に利用されるため、堆肥発酵の過程での[N]はあまり減少しません。したがって堆肥発酵の過程でC/N比は徐々に下がり、最終的には微生物のC/N比10程度に近づきます。そして[N]の多くは有機態の[N]、すなわち菌体タンパク質として存在するので、アンモニア臭の少ない堆肥となります。
  この高いC/N比を下げることと、窒素[N]をアンモニアなどの無機態ではなく、菌体タンパク質などの有機態として保持することが堆肥づくりの重要な目的なのです。

 次に、堆肥原料となる新鮮有機物のC/N比を、以下の三つに分けて考察してみましょう。

C/N比が20以下
敷料の少ない比較的C/N比の低い新鮮有機物は、分解が速く、堆肥化の期間も短くなるのが特徴です。この場合の出来上がった堆肥は、土壌改良的効果というより肥料的効果が高くなるという特徴があります。多量に施用する場合、化学肥料を減肥するなど投入する肥料成分を調整し、とくにスラリーなど液状に近いものは水分の抜けた通常の堆肥よりも窒素とカリの肥効率が高くなるので、良質作物栽培をするためにはリン酸とカルシウムなどの土壌改良資材を施用する必要があります。水はけの良い火山灰土などの圃場での利用を心がけ、粘土質など水はけの良くない圃場での利用には施用量などに注意する必要があります。
 このC/N比の低い堆肥原料に関しては、嫌気性発酵は好気性発酵に比べて明らかに優位性があります。それは敷料が少ない水分の多い堆肥、またはスラリーなど、液状のものは物理的に切り返し等の作業がむずかしいからです。次に、C/N比の低いスラリーの事例を紹介します。

 根室管内B町のK牧場とは20年近いお付き合いをさせていただいております。最初の出会いはB町で行われた私のサイレージについての勉強会がきっかけだったと思います。そして8年程前に私が嫌気性菌主体の微生物資材R/MをKさんに紹介したところ、すぐに使用を開始してくれました。

Kさん「今はとくに困っていないが、スラリーを生で撒いていれば、いずれ困ることになるだろう」

 そんな話しで始めていただきました。
 話しをしたその年の春にラグーンのスラリーにR/Mを入れ、一番草収穫直後にそのスラリーの散布が開始されました。その散布のときに訪問し、スラリータンカーの後ろを私も歩いてみたのですが、ほとんどニオイがありませんでした。

Kさん「親父がラグーンのスカムの上を歩いてブラシカッターで草を刈っていたくらいスカムには困っていたが、スカムはなくなったし、ニオイもかなり少なくなった」

 さらに、「スラリーは良いものができるようになったが、肥料はどうしたら良いのだろう?」との質問があったので、一緒にR/Mの使用を開始した仲間にも声をかけてくれて、その冬にK牧場近くの公民館で勉強会を実施しました。そこでは土壌改良資材として有機質リン酸カルシウム肥料S/GをR/Mと一緒にスラリーに投入し、攪拌することと化成肥料の減肥を提案しました。
 2年目にはその仲間の方も一緒に、春の施肥からそれらも実行してくれました。その後Kさんは、こうも話してくれました。

Kさん「スラリーの汲み上げが早くなったような気がする。それにスラリーを散布した後、草にくっついているスラリーが少なくなった。とくに草が伸びてから散布しても、雨が1回降ればきれいにスラリーが取れている。これからは散布する時期を気にしなくても済むから助かる」
スラリーが良質なものになっていくと、まずニオイが減ります。そして下層のオリ、中層の水様物質、上層のスカムに分離していたものが、全体的に均一なものになります。そして粘性が下がります。

 そして一番草収穫作業中に訪問したときに、こうも話してくれました。

Kさん「土が軟らかくなって、トラクターに乗っていても楽になった」

 3年目の一番草刈り取り前に訪問したときには、「今年は冬枯れの被害が大きく、普及所が調べた結果、この地区でうちが一番被害が少なかったと言われた。スラリーの入っているところは、とくに被害が少なかった」との話しでした。
 その秋にKさんから電話をいただき、「一度相談に来てほしいのだけど、バイオガスをやろうか迷っている。図面もできているんだよね。でもスラリーがうまくいって良い草が採れるようになってもったいないような気もするし…。話しは変わるけど、二番草を肥料屋さんに調べてもらったら、糖度が11~12もあった」とのお話し。

「牧草の糖度は計り方で計測違いが出ることもありますよ」
Kさん「いやいや、牧草を刈っていても、ハーベスターで刻んでいても、ダンプで運んでいても、甘い香りがするんだよ。タイヤショベルでサイレージの踏み込みをしても、前みたいに下がらないんだよね。乾物が増えたのかな。これだけ良い草ができるようになったから、来年は乳酸菌はいらないよね」

 4年目、15年以上他社製品と比較しながら良い製品との評価をいただき使い続けてくれたサイレージ添加剤の使用をいよいよ中止。しかし、その無添加サイレージを開封後には、

Kさん「やっぱり乳酸菌を入れたのと入れないのでは全然違うわ。来年からまたきっちり使うことにするよ」

 5年目、サイレージの添加剤復活。原料中の糖が十分にあることはサイレージ発酵に重要な要素ではありますが、その糖を乳酸菌だけが利用するという保証はどこにもありません。例えば、トウモロコシは糖が多いけれども、二次発酵した場合、牧草サイレージよりなかなか抑えるのがむずかしいという経験を持っている方は多いはずです。

 長い話になってしまいました。Kさんは最初にお会いした頃、「日本で一番牛のいるB町で牛飼いになったのだから、1000tは搾りたい」と自分の目標を話してくれました。これをかなり早い時期に達成し、その後は「2000t搾ったら、母ちゃんと楽しようと話している」との目標も語ってくれました。約2000t近く搾った後、最近はやや頭数を減らしてマイペースのようです。「無借金だし、のんびりやっているよ。これからはいろいろな牧場を見てまわりたいね」とのこと。

「もし酪農をやめたとしたら、次に何をしますか?」
Kさん「やめたりしないけど…。もし酪農をやめたら、次もやっぱり酪農だね(笑)」
  とのことです。良い話しを聞かせていただきました。

参考資料  各種の有機物や堆肥を施与した最初の年に放出される窒素量 (志賀ら.2001)
資料名 C/N比 窒素含有率
(乾物中、%)
窒素無機化率*1
(%)
窒素の放出量・
取り込み量*2
(kg/乾物100kg)
魚かす 4.7 9.08 88 8.6
ダイズかす 4.7 6.95 80 5.6
米ぬか 15.0 2.40 83 2.0
余剰汚泥
(食品工場)
6.3 6.97 75 5.2
鶏ふん 6.0 4.09 75 3.1
豚ふん 9.8 4.24 60 2.5
牛ふん 15.5 1.99 33 0.7
クローバ 12.2 3.55 63 2.2
稲わら 60.3 0.65 -2.4 -0.02
麦わら 126.0 0.33 -116 -0.4
製紙かす 140.0 0.29 -88 -0.3
おがくず 242.0 0.21 -87 -0.2
稲わら完熟堆肥 12.5 2.49 24 0.6
稲わら中熟堆肥 15.8 2.10 9 0.2
稲わら未熟堆肥 24.6 1.60 6 0.1
おがくず豚ぷん堆肥 22.0 1.92 27 0.5
おがくず牛ふん堆肥 17.1 2.31 20 0.5
バーク堆肥-1 19.3 1.95 13 0.3
バーク堆肥-2 35.3 1.05 -2.3 -0.02
*1: 有機物が分解して窒素が無機態に変化する割合
*2: この値が正の値なら、有機物に由来する窒素の放出(無機化)量、この値が負の値なら土壌から取り込む(有機化)窒素量(各有機物乾物100kg当たりの窒素量、kg)

C/N比が20~30
 適量な敷料を含むC/N比20~30の新鮮有機物は、一般的に、土壌改良効果と肥料的効果を持つ良質堆肥づくりのために最適な堆肥原料です。言い換えれば、堆肥原料のC/N比を20~30に調整することが、良質堆肥づくりのスタートになります。とくに好気性発酵による堆肥づくりにとって、空気の入りやすい状況と水分調整の機会も与えてくれます。
  理想的な堆肥原料における好気性発酵堆肥と嫌気性発酵堆肥の比較事例を紹介します。

 7年程前の冬に、群馬県のM市で酪農家向けの堆肥づくりの勉強会を実施しました。嫌気性発酵主体による生堆肥の土中発酵についてお話したところ、参加した皆さんが大変興味を持たれ、その中心的人物Kさんの牧場の畑を使って、その春に比較試験をしてみようということになりました。そのKさんは堆肥づくりに一生懸命な、また上手な方です。Kさんの堆肥を使って2反の畑をつくり、私がつくった堆肥を使ってその東隣に2反の畑をつくりました。その2反ずつの畑は地続きの1枚の畑で、その中心南側に電信柱が立っているので、それを境界の目印として東西に分けて同じ日につくりました。
  私のつくった堆肥は生堆肥にR/MとS/Gを混合してつくったもので、つくったその日のうちにKさんの堆肥と同時に畑に入れました。そして両方に同じ品種のトウモロコシを播きました。秋になり、前回の勉強会に出席いただいた酪農家の皆さんにもK牧場に集まってもらいました。そして収穫直前のこの2種類の堆肥を入れた畑のトウモロコシを、全員で畑に入っていろいろ比較検討しました。
  その差は一目瞭然で、皆さん大変驚いていました。私のつくった堆肥のトウモロコシのほうが質・量ともに出来が良かったのです。
  その後半月ほどして、私のところへ群馬からその収穫後に起こしたトウモロコシ畑の写真が送られてきました。土の状態が電信柱を境にはっきり違うのです。私のつくった堆肥の入った圃場のほうがより濃いこげ茶色で、土も軟らかくなっていることが写真からもわかるものでした。その差を私に知らせようと送ってきてくれた写真だったのです。

 その後、勉強会・検討会に参加してくださった方々を中心に、R/MとS/Gを使った堆肥づくりをされる方が出てきました。そしてその翌年、私が当地を訪問したとき、M市の山沿い周辺でダニが異常発生しました。それはイタリアンを喰い荒らすという虫害で、指導機関に問い合わせたがどうしたら良いかわからないとのことで、皆さんとても困っていました。しかしR/MとS/Gでつくった堆肥を入れた畑には、まったくそのダニが発生しないのです。このことにも皆さん大変驚いていました。そしてその年のラップサイレージを再度訪問の際に見せていただきましたが、色は明るくてつやがあり、果実臭のするとてもすばらしいラップサイレージでした。ご本人も大変喜んでいたことがとても印象的でした。
 そのときからのご縁で、その後Kさんの圃場を毎年1反ほど、リサーチのために無償で使わせてもらっています。
参考資料2  堆きゅう肥の品質特性
(農林水産省農蚕園芸局農産課、1982より作成)

 
図の円はT-N2%,T-C30%,C/N20,Ash35%,P2O52%,
MgO1%,CaO5%,K2O2%を基準として描いている
C/N比が30以上
 オガクズ、バークなど木質系炭素の比率が高い敷料を多量に使った堆肥原料の場合、全体のC/N比も高くなります。分解は遅く、堆肥化の期間も長くなります。この場合の堆肥づくりのポイントは、少し切り返しを多めにするか、あるいは硫安など(N)を添加してC/N比を下げ、微生物の増殖を図り、分解をより強力に進める方法もあります。
 うまくC/N比を下げられれば、土壌改良効果の高い堆肥となります。その場合、肥料的効果は低くなる傾向があります。一方C/N比の高い堆肥原料が十分に発酵せず、C/N比の高いまま堆肥として畑に持ち込まれると、肥料等で供給された土中に遊離する無機態窒素[N]を微生物が細胞内に活発に取り込み、有機化します。そのため作物が利用すべき窒素[N]が不足し、作物の生育が著しく制限されることがあります。これを「窒素飢餓」と言います。
 バークやチップなど木質系の敷料を使った発酵牛糞堆肥、とくにルーズバーンなどでよく踏み込まれた堆肥は、水はけの悪い土壌、とくに重粘土の土壌の物理性を改良するのに大変有効です。団粒を形成し土を軟らかくし、水はけ・水もちと空気の流入を改善し、根の張りを良くします。この事例を紹介します。

 8年ほど前に北見地区のS農協からの依頼で、農協営農部職員の技術研修を目的に、2年間の予定で当地のG牧場において堆肥による土壌改良を通して、良質なサイレージをつくるための技術研修をお手伝いさせていただく機会がありました。 そのG牧場でまず行ったことは、町内肉牛牧場のバーク踏み込み堆肥をさらに良質発酵させ、それにG牧場の堆肥を混合し、そこにリン酸質肥料を加えての堆肥づくりでした。その堆肥が入ったトウモロコシ圃場を生育期間中に何度か訪問し、見せていただきました。生育は大変良好で、そのトウモロコシサイレージの詰め込みにはS農協の職員の方々と、われわれファームテックジャパンのスタッフ、そして栃木のN酪農協(現在は3農協が合併してT酪農協)職員のSさんも研修のため立会しました。さらにスタッフのための理想的なサイレージマネージメントを見ていただくために私もトラクターに乗り、踏み込みを手伝いました。 その夜のホテルでのこと。栃木からわざわざサイレージの詰め込みを勉強(手伝い)したいとのことで参加していたN酪農協職員のSさんが夕食後、私の部屋を訪ねてきました。ノートとペンを持ち、「少し聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」とのこと。その日G牧場でやったことなど、サイレージについていろいろ質問をするのです。終わってみたら酒も飲まず、朝の3時になっていました。この勉強熱心なSさんのいる、そしてSさんにこの研修の機会を与えてくれたN酪農協は、将来立派な良い組織になっていくと確信しました。
 余談になりますが、このN酪農協にはもう一人Wというすごい男がいます。彼は休みの日に日帰りで、それも自費で私のところへエサづくりを習いに来たことがあります。空港に迎えに行くと彼はリュックに私への土産として、実家でつくった米を入れて持ってきました。私は彼をエサづくりの上手な恵庭のH牧場へ連れて行きました。そこで彼は、空になったリュックいっぱいにそのH牧場の乾草とサイレージを詰めて、うれしそうに帰っていったのです。酪農業界に携わる人間がみんな彼のように情熱を持って取り組んだら、日本の酪農の質はさらに良くなるのではないでしょうか。
 話は戻りますが、G牧場で詰め込んだトウモロコシサイレージを、「40日以降に開封しましょう。そのときまた来ます」とGさんと約束していたのですが、Gさんは「それまで待てない。少し開けてみていいか?」と電話をかけてきたくらい楽しみにしていました(実際はGさんの熱意に押され、開封したところには十分プロピオン酸をかけて再び完全に密封することを条件に、少しだけビニールを切って開けることを了解しました)。
  開封後、私もそのサイレージを見に行きました。土の上につくったサイレージですが、サイレージに土がつかず、土にサイレージがつかない、見事なサイレージができていました(正確にはスタックをつくる場所を事前に打ち合わせをし、水はけが良くなるようバラスを敷き、その上に川砂を敷いたので厳密には砂)。その後も、そのサイレージ給与後のGさんの牛のコンディションを見るために、たびたび訪問させていただきました。
  また1年目にトウモロコシをつくった牛舎横の圃場に、2年目にはビートの作付けをしました。このビートの生育もまた見事なもので、当のGさんもびっくりしていました。それとGさんは当時、こんなことも言っていました。

Gさん「いい堆肥をつくるようになってから、乗用車で通りかかる人がトランクから肥料袋を出し、ウチの堆肥をコソッと持っていくようになった。それもいくつかある中で、一番良いものを持っていくんだ。素人でも良い堆肥はわかるんだね」

  G牧場は交通量の多い幹線道路沿いにあり、そこの一番目立つ小高いところに堆肥を置いていたので、濃いこげ茶色のつやのある素晴らしい堆肥は、誰の目にも良いものだとわかるのだろうと思いました。
  S農協さんからの依頼による予定の2年が過ぎ、技術研修のお手伝いの最終日、S農協の営農部長Kさんが“ご苦労さん”の席を設けてくれました。その席で私に1枚のコピーを渡しながらこう言ってくれました。

K部長「東出さんたちには大変頑張っていただきありがとうございました。ただ私も一つだけ頑張りました。それは今まで町内の肉牛牧場の堆肥は畑作農家に運ぶ際にだけ補助が出ていましたが、今回のことで、酪農家に運ぶ際にも補助が出るようにさせました」

 その渡されたコピーには黄色のマーカーがしてあって、そこには確かにK部長が言ったことが書かれていました。

 その後Gさんは、北見管内で堆肥づくりのための講師を頼まれたり、さらに4年ほど前には札幌市内のホテルで開催された畜産環境保全の講習会で、全道から集まった200人ほどの関係機関の技術者の前で発表者として参加されていました。私は忙しくてその発表を聞きに行くことができませんでしたが、うちの若いスタッフに聞きに行かせテープに録ってきてもらい、Gさんの話を大変幸せな気持ちで聞かせていただきました。
  現在ではそのバーク堆肥の効果が評判となり、すべて畑作農家さんにまわってしまうため、G牧場では昨年から入手ができなくなったそうです。しかし自分のしてきた努力が土づくりを見直すきっかけとなり、畑作農家さんが良いビートなどの作物が採れるようになってうれしいとGさんは話しています。現在Gさんは、牧場外周のクマザサを刈ってきてそれを刻み、オガクズと一緒に牛糞に混ぜるという新たな堆肥づくりに挑戦しています。
  ガンバレ、G牧場!

 次回は、良質作物栽培に重要な働きをするリン酸とミネラルについて見ていきます。


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