優秀な製品と適切な情報で皆様のお役に立ちたい
◎発酵堆肥(有機物の腐植化)の利用目的
|
|
生堆肥・未熟堆肥 ※ここでは未熟堆肥も生堆肥として扱い、そう表現します。 |
・ | 発芽不良や苗立枯れなどにより、株立て本数が減少する。 |
・ | 初期生育が悪くなり、揃い性も悪く不稔個体が増える。 |
・ | 倒伏や病気の発生が多くなる。 |
・ | 登熟が遅れ、枯れ上がりも悪くなり、硝酸態窒素と水分の多い低品質なサイレージ原料になる。 |
・ | 生の尿、時にはスラリーでも高温時に散布すると牧草がやけるなどのストレスを受け、裸地が増え、草地の荒廃が始まる。発酵させた尿は臭い(アンモニア)も少なく、草がやけるようなことも起きない。 |
・ | 牧草以外の雑草、とくにギシギシが増える。 生堆肥から種子が持ち込まれたり、生育中の株から種子が落ちて増えると言われていますが、それだけではありません。むしろ草地を生堆肥で荒廃させたことにより、荒地に適するギシギシが優勢になった結果と考えられます。これは良質な発酵堆肥や尿を散布するとギシギシはどんどん退化していくということを私も酪農家の方々も経験として持っているからです。 例えば、イネ科とマメ科の混播草地でマメ科が優勢になった場合、マメ科の種子が落ちて増えていっているとは考えないでしょう。イネ科よりもマメ科に適した条件が揃ってきたために起きたことと考えるのが一般的なはずです。マメ科が消えて、イネ科になった場合も同様です。“雑草が教えてくれること”というような海外で出版されていた本を昔読んだことがあるのですが…。 |
・ | 収穫時の乾物と糖度が低く、硝酸態窒素の高い倒れやすく乾きにくい牧草となり、サイレージや乾草の良質化が難しくなる。 |
・ | 散布時期によっては、収穫時(刈り取り時)に牧草に堆肥が混入し、サイレージを劣悪なものにする可能性がある。 |
好気性発酵堆肥 |
・ | 前月号に書いたとおり、良質な作物をつくるための手段として有効である。先に書いた生堆肥の悪さはすべて解消される。 |
・ | ただし堆肥づくりのために多大なエネルギー(労力、施設、時間、石油、電気、敷料等)を必要とする。そのため多くの方々が良いとはわかっていても頭数の増加とともに実践できずにいるのが現状ではないでしょうか。 |
・ | さらに土壌改良効果は高いが、堆肥中のエネルギーのロスが多く、完熟に近いものほど、収量に影響を与え、結局、化学肥料の使用量低減ができなくなる。 |
・ | 好気性発酵堆肥の場合、好気性微生物が酸素(O)を利用して堆肥を分解し、自らは増殖し、多量の熱とともに炭素(C)を炭酸ガス(CO2)、窒素(N)を窒素酸化物(NOX)、硫黄を硫黄酸化物(SOX)として多量に大気中に放出します。その結果、最終的には臭いの少ない安定した物質となります。しかし現在では循環型社会の構築と環境保全型農業の確立を目指すヨーロッパを中心に、この放出される物質が地球の温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊の原因、すなわち大気汚染の原因になっていると指摘しています。さらに化学肥料の投入量低減のために、有機物中の成分の大気中への揮散を防止し、その有効利用を検討しています。 日本は水質保全のために糞尿施設の整備を進めてきました。しかし畜産先進地のヨーロッパではすでに水質汚染から大気汚染に目が向けられています。その点好気性発酵は、今後多くの改善が迫られる可能性があるように思います。 |
嫌気性発酵堆肥 |
・ | 添加後の発酵中の臭いも、圃場に散布後の臭いも少ない。 |
・ | 発酵期間が短い、切り返しや曝気を減らすことができる=堆肥が土壌に投入可能になるまでの期間が短い。尿の場合1~2週間程度で、高温時でも草はやけない。 |
・ | 肥料成分(エネルギー)が高い。減肥分でR/Mのコストがまかなえる。 |
・ | 作物の登熟が進む(冷害年の麦、米における等級が高かった)。 |
・ | 10年以上の連続使用で何ら問題は起きておらず、長期使用が可能。 |
・ | 牛床やパドックに散布した場合、環境性乳房炎を抑制すると言われている(多くの酪農家の評価)。 |
・ | 堆肥センターでの成果として、1カ月程度で仕上げた堆肥がハウス栽培でハウス1棟当たり10tを毎年投入して高い評価を得ている。大量使用・連続使用が可能と思われる(九州・熊本、しかし堆肥発酵の一般的な分析では評価は低い)。 |
・ | 嫌気性発酵堆肥を作る場合、R/Mのような何らかの種菌の接種が必要。無添加では多くの先生が言われるように嫌気性発酵では良い堆肥、液肥はできない。したがって無添加の場合、十分な切り返しあるいは曝気を実施した好気性発酵のほうが良いものができる。 |
|